砂の流星群◎青い夏に虫ケラ

砂の流星群◎青い夏に虫ケラ

彌冬月(久泉) 著

 

◎椅子を円形に囲み、怪談話をするかのように学生が好きな位置に順に座り、最後に楕円の端に教授が座ると、女性らしい声で静かに授業を始めた。何度目かの講義はみんなが討論しやすい形で始まったが、見慣れない学生が数人混じり、あれ?君はどこの学部だい?と違和感を感じた男子学生が、スタイルの好い女の子に声をかけた。え?隣りの学部よとややしどろもどろにごまかした女は、あー、中文か?あそこの細い女も掛け持ちでこの学部に来ているんだ、知りあい?と友好的に話しを続けた男に、よく知らないけどちょっとねと言っていると入り口からまた知らない顔の学生風の男が話しを聞いて飛び出し、ちょっと来てと女を呼び出した。

暫くして授業に戻って来た女に、大丈夫だからと呟いた連れの男は教室から素早く去り、スタイルの好い見慣れない女は、落ち着きはらった態度で椅子に腰掛け、細く長い足を組んだ。

 

もう一人の見慣れない学生は尼さんの格好でペラペラな中国語を話し、韓国からの留学生だと楽しげに皆の輪に入った。

 

それから気さくな男子学生は、後の授業で大きくなった違和感に耐えきれずに、T姉に率直に訊ねた。

「君が来てからは、何故か変な学生が増えたようだけど?」

つい数ヶ月前に、友人だと思っていた台湾女に男を交えた友情と恋愛詐欺によってひどい犯罪被害に遭遇して心身に重大なダメージを受けたT姉は、尾行されているとは言えず、…そうなんだ…?と聞きとれないほど小さく答えた。◎

 

 

 

 

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